介護人材の不足率から人材育成を考える視点

521日、厚生労働省は第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の確保について公表しました。

人材育成の課題から、学び、考える!

人材育成に力を入れている、いつもお世話になっているKさんから、介護事業所の人材育成に関する課題を3ついただきました。この3つの課題は、介護事業所の人材育成にとって、とても重要なことと思い、掲載させていただきました。



3つの課題は、管理者(施設長)の人材育成マネジメントの課題かと思います。人材不足が加速化している事もあり、本当に多様な人材が施設に入ってきています。この多様な人材を、戦力化していかなければならないのが、介護の社会であり、施設単位というよりも、法人という組織でも向き合っていかなければならない課題かと思います。

※人材マネジメントの仕組みを構成するパーツには、採用、育成、配置・異動、評価、報酬、昇進・昇格などがあります。


前回のブログで、製造業のコンサルから見た介護事業所の課題の一つです。




Kさんからの課題を一言でいうと、上記の「現場のマネジメント力が弱い」ではないでしょうか。

ここで考えてもらいたいのは、人材育成ではこのマネジメントを「管理」として位置づけるのではなく、支援」という言葉で考えてもらいたいのです。
 

中原淳.職場学習論‐仕事の学びを科学する.
東京大学出版会,2010148p.



右図は、「職場学習論」での職場学習のモデル図です。
職場=現場での職員の関わりを表しています。
職場学習のモデルの組織風土にするためには、
現場の施設長の力量によると筆者は言っています。
 管理者(施設長)は、大変ですね。ここで言う「現場のマネジメント=支援力」、
また、Kさんの課題にあった組織風土は、
簡単に習得できる話ではありませんが、
中長期で人材=人財を育成する視点を持つ事で
できると私は信じています。




とは言っても、現場には、本当に多様な人材がいます。その多様な人材に対して、前のエッセイで書いた職場の5割の人が、職場を良くしていこうという気持ちになった時、はじめて施設は、大きく動き始めると思っています。(すみません、5割の根拠はないです。)その5割にするためには、組織としての仕掛けが必要ですね。 

介護の生産性向上の視点から現場を振りかえる!

介護の生産性向上という言葉や情報が頻繁に聞かれる様になっています。介護業界において、生産性の概念は、まだ新しく馴染みが薄く、そのため『生産性』=『費用削減』『利益追求』と短絡的にとらえ、『人員削減目的』や『ケアの質より作業効率重視』とした反発的な認識も先行しがちです。

配置基準3:1に対して介護老人福祉施設(従来、ユニット型含めて)の全国平均は2:1であることは、理論上は最大1.5倍の生産性を向上することができます。今回のエッセイでは、生産性向上の報告書や研究論文を基に、生産性を向上する意義や生産性向上の観点から見た介護事業所の問題や課題を学び、自施設の現況に落とし込んでもらえたら幸いです。

政府は人口減少時代の対応として「一億総活躍社会」の実現を掲げ、「名目GDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」を目標としています。「一億総活躍社会」の実現の対応策の一つに「労働生産性」の向上があります。日本の人口ピラミットを見ると、今後の生産人口の増加が期待できないのは明白で、一定の経済成長を目指すためには時間当たりの労働生産性の向上が求められています。

介護も労働生産性向上は避けて通れません。下記は平成30年度の国の方針です。

厚生労働省 介護事業所における生産性向上推進事業【新規】 平成291018日資料
 
国は、介護事業所における生産性向上として、ICT化と介護ロボットの活用による業務の効率化、業務プロセス、作成文書の見直し等の調査研究を実施し、ガイドラインを作成してから普及啓発啓蒙を行うとしています。介護事業者にとっては、現場に有効なICT化とロボット、作成文章の見直し等のガイドラインを早期に期待するものです。
 
※この4月、厚生労働省が介護の現場に課しているペーパワークの半減に向けて、パブリックコメントを募集していますが、内容的には施設の指定申請や施設の設立認可に関する事であり、「介護の現場」に有効的とはほど遠いと思われます。とても介護の現場が助かるものではありません。形だけで終わらない事を祈ります。
 
 
ここまでは、ほとんどの介護事業所の責任者は知っていることですね。
 
()NTTデータ経営研究所の平成28年度報告書「介護サービス事業における生産性向上に伴う調査事業」を基に、介護における生産性向上の意味あいを学んでみます。
 
下記は、「生産性を向上する意義」について、当該報告書からの引用です。
 
()NTTデータ経営研究所. 介護サービス事業における生産性向上に向けた調査事業報告書.平成2995
(一部変更)
 
上記の考え方を、自分なりに整理していくことがとても大切と思われます。

下記は、「生産性向上」を「介護労働の価値を高める」に読み替えを行った理由です。

()NTTデータ経営研究所. 介護サービス事業における生産性向上に向けた調査事業報告書.平成2995
(一部変更)

産性向上は、人を減らすことが目的でなく、質の向上を目的とすると言っています。この意味あいを吟味することで、ピーエムシーがエッセイで伝えている「少ない職員でも、質の高いサービスを継続的に提供できる体制づくり」に繋がります。

()NTTデータ経営研究所の平成28年度報告書「介護サービス事業における生産性向上に伴う調査事業」は、いかにして介護労働の価値を高めるかを介護における生産性向上のテーマとし、介護事業へのコンサルティングを実施した結果を報告しています。調査の手法は、製造業に蓄積する多様な知見を活用していますが、この結果報告からは、ある意味、介護事業者として、真摯に振り返る重要な点が指摘されていると私は感じ、この指摘をどう受け止め、事業に役立てるかが介護事業者の力量ではないかと考えます。


上記の補完です。本事業においては、製造業に蓄積された生産性向上に関する知見とは、3M(ムリ・ムダ・ムラ)の視点から経営上や現場の問題を整理し、5S(整理・清掃・整頓・清潔・躾)の認識に基づいた改善活動を通じ、その活動が定着するまでの一連のプロセス全般と捉えることを基本方針とした。(当該報告書からの引用)

下記は、事業推進に伴い得られた介護現場における生産性を高める5つ視点と課題です。

 





上記、5つの視点とそれぞれの課題は、いかがだったでしょうか。これらの課題は、皆様においては十分に認識されていることと思われますが、現場職員的には「人がいない」「忙しい」等が先行しているのが現状です。そこをどう手を入れていくかが、国が言う「現場の研修プログラムの導入」なのかもしれません。

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「谷さんは、毎日24時間介護のことを考えているのですか?」との質問を受けました。

3つの研修の意義


今回のエッセイは、弊社研究開発室長の斎藤洋によるものです。

理想と現実のギャップを受け止め、成長させる組織プログラム


図は何度もブログで出てきている「介護人材のキャリアパス全体像」です。

チームリーダー育成の重要性の理解が介護現場を変える!


今回のブログでは、チームリーダーのキャリアパスと育成について考えてみます。