44.「成長する組織」への挑戦-2


K様からありがたいメールをいただきました。(赤字部分は追加しました。)

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いつもお世話になっております。
組織を変えるという言葉は最近よく耳にしますし、方針に変革とか変化を使う組織は多数あります。
しかしそれはそう簡単なものではないと思います。
私は方法を変えることと人が変わる(配置転換)が一番いいと思っていますが、私の中の思考を変える、人の意見を聞く、活かすことがとても重要だと思っています。

例えば入浴は大切ですが本当に入浴しなければならないかという視点を見直す、シャワーという方法を全面的に、それも週3回にするという方法もあるとかを考える。そんな具体的な「視点を変える」ことが組織を変えるのだと思います。
従来とは何なのか、前例とは何を根拠にしているのか、私たちは行政の人でもなく生きている人を相手にしているし組織は生きているのだといつも思っています。
人が足りないのであれば工夫するしかないのです。
それがITVだったりするのです。
もう人を育成するだけでは足らない時代がきたと思います。

でも変わらないのは「人を看ることが価値ある仕事であること」これだけです。

谷さんのメールをみながらそんな事を思いました。
今後ともよろしくお願い致します。
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こちらこそありがとうございます。エッセイ『43.「成長する組織」への挑戦-1』の中で私が書いた「組織を変える」という私の言葉をとても具体的でわかりやすく明確にしていただき感謝します。

『思考(視点)を変える、人の意見を聴く、活かす』とても重要な事です。

ピーエムシーも「組織を変える」という抽象的な言葉でなく具体的な言葉に変換すると、『ありきたりの研修ではもう足りなく、新しい発想やアイデアをみんなで出しあえる、現場から発信する、変えていく力を醸成する研修開発』でしょうか。

組織変革は職員1人が変わることでなく、組織として『思考(視点)を変え、人の話を聴き、活かす』ことができる人材を開発する仕組みを創ることが重要であり、開発した人材がいかに職場、組織、個人の成長にどう繋げるかが大きな課題であり使命だと私は思います。

K様が言われるようにこのことは簡単な事ではありません。しかし、組織の変革は今後の介護社会の生き残りの根幹だと思いますが、皆様はいかがお思いでしょうか。

この「組織を変える」に、私やピーエムシーやいくつかの法人施設が挑戦を始めています。

下記に「組織を変える」に向かうための考え方として、いくつかの図を提示します。皆様はいろいろなところで見知っている図かもしれませんが、これらの図が「組織を変える」に近づく根幹であることには違いがありません。また、ピーエムシーはこれらの図等を一つの基にして研修を行い、介護の社会が必要とする新たな力やその事がわかりやすく表現できる図を研究開発し創っていくことで介護の社会に貢献することが仕事と考えています。


1.キャリアをつくる4要素=3層+1
“村山昇『働くこと原理』”.http://careerscape.lekumo.biz/genron/

http://careerscape.lekumo.biz/genron/
今までの介護の社会での人材育成は、上図①の知識・技術・資格、②の行動特性(リーダーシップ、マネジメント、ストレス等)・態度(コミュケーション、マナー等)に関する『HOW(手段)』の研修が多く、③のマインド・価値観である「WHY(意義づけ)」と④の夢・志/目標/業務ミッション/理想イメージである「WHAT(目標・目的)」の研修は、認知症介護実践リーダー研修、ユニットリーダー研修等で主に行われていますが、あくまでこの研修に参加した職員だけの学びであり、職場の他のリーダー等に共有し展開されていない現実があります。つまり、『個人の成長』だけになっているのです。

ピーエムシーが考えるリーダー研修の一つには、施設の主任やリーダー全員に月1回、3年~5年この①~④『HOW(手段)』『WHY(意義づけ)』『WHAT(目標・目的)』を効果的に取り入れて行うことです。3年~5年としているのは、リーダーの資質素養力量や組織、職場の環境や支援によって、変革の効果が出てくる年数が違うかと思います。



2.ロバート・カッツが提唱した3つのスキル
“いまなぜコンセプチュアル思考か?.コンセプチュアル思考の教室. https://www.conceptualthink.com/

https://www.conceptualthink.com/

経営の分野でコンセプチュアル能力の重要性を唱えた一人に、ロバート・L・カッツがいます。彼は、『ハーバード・ビジネス・レビュー』(19749月号)に寄稿した「Skills of an Effective Administrator」のなかで、管理者に求められるスキルとして、

「テクニカル・スキル」 (方法やプロセスを知り、道具を使いこなす技能)
「ヒューマン・スキル」 (人間を扱う技能)
「コンセプチュアル・スキル」 (事業を全体的に把握する技能)
の3つをあげました。

そして、管理者を下級(ローワー)・中級(ミドル)・上級(トップ)の3階層に分け、上にいくほどコンセプチュアル・スキルの重要性が高まると指摘しました。

前段の1.キャリアをつくる4要素=3層+1軸と同じく、介護の社会の人材育成においては「テクニカル・スキル」「ヒューマン・スキル」の研修は広く行われていますが、「コンセプチュアル・スキル」を磨く研修は少なく、まして、施設の主任、リーダーを主体とした研修は、ほとんどの法人・施設では行われていません。

ピーエムシーが考える研修は、ここにも焦点を当てています。


3.観をつくる
“コンセプチュアル思考〈第2回〉~「コンセプチュアル思考」とは何か 村山昇https://www.hrpro.co.jp/agora/4061

私たちは長く生きていく間で、成功や失敗ということを図のように抽象化概念化具体化のサイクルで包括的に認識していきます。

そしてやがて自分なりの「成功観」ともいうべきものを醸成します。

https://www.hrpro.co.jp/agora/4061
包括的に物事をながめ、観をつくります。


上記図には説明が必要ですが、今回のエッセイでははぶかせていただきます。

ピーエムシーが考える研修は、ここにも焦点を当てています。

以上、3つの図はいかがでしたか?
難しかったでしょうか?

  • 「谷さん、うちの主任やリーダーには無理」
  • 「谷さん、介護の職員だよ、考えてみてよ。できるわけないよ」
  • 「あはは、リーダーになりたくてなっていない人もいるのに、そんなレベルを求めるのは土台無
      
    理な話だよ」
  • 「現場は人がいなくて、月1回の継続的な研修なんて無理だよ!」などなど・・・
できる・できないはそれぞれの考え方です。挑戦している法人施設がある事実だけです。
ピーエムシーは現場を知っているので、最初から難しい図の話はしません。

下図の現実的なことからファシリテーターにより話を進め、皆で考えていきます。

自分たちで考える力が醸成されるまで時間をかけていく必要があります。

抽象化から始まり、概念化そして具体化、行動展開して気づき新たな抽象化へ つまりPDCAの繰り返しです。

https://www.hrpro.co.jp/agora/4061

このような考え方の研修を続けていくことで、リーダーが新たな事を自分の力で観る視点が醸成され、リーダーは先ほどの図の意味がわかってきます。     
その時、職場に変革が生じます。

職場を変革していくためには、全職員を巻き込んでいかなければなりません。

そのためには仕組みが必要です。

ピーエムシーは、前のエッセイで下図「多様な介護スタッフのキャリア形成を支援する研修計画」を示しています。この提案は一つの初期提案です。リーダーが醸成されていくことで新たな仕組みができてきます。ここもピーエムシーの研究開発課題です。




人材育成の結論は、組織が何を求めるかです。
本質を求めるなら、このエッセイの提案は一つの価値ある仕組み(手段)です。

時間はかかります。
結果を直ぐに求め、簡単に良しとしてしまうとリバンドしてしまい、求めている力を失ってしまいます。
本当に簡単なことではないです。

「職場の成長」→「組織の成長」→「個人の成長」→「職場の成長」→繰り返しを拡大!
そして行くつく先が「組織の変革」ではないでしょうか。



村山昇氏の「働くこと原理」をご紹介します。

『働くこと原理』The Elemental Lecture on Working
キャリアポートレートコンサルティング代表:村山 昇
“『働くこと原理』”.http://careerscape.lekumo.biz/genron/

キャリアをつくる4要素=3層+1軸

◆職業人が内面に持つ3層+1軸

私たちは一職業人として、ある職業を選び、日々さまざまな業務を行い、業績を残し、組織・社会での役割を担いながらキャリアをつくっていく。このキャリアをつくる要素を、私は図のような4つの要素(3層と1軸)で整理している。


http://careerscape.lekumo.biz/genron/

第1層にくるのが「技能(スキル)・知識・人脈」である。

私たちは日々大小の業務をこなすために、自分が持っているさまざまな専門知識や技能、資格、そして人脈を組み合わせる。そうしたものは、言ってみれば自分の「手駒」であり、数が多ければ多いほど、質が高ければ高いほど、それらを組み合わせて成就できる仕事の大きさや表現は広がりをみせる。

私はこのことを理解させるのに、玩具の「レゴブロック」を用いた研修を行っている。受講者には最初、ブロックピースを20個渡して、船をつくってもらう。そして次に50個渡して船をつくってもらう。すると、創作できる船の大きさや表現の豊かさは後者のほうが格段に増す。

だからこそ私たちは、日々、仕事で知識・技能を習得したり、自己啓発で教養を身につけたり、交流会で人脈を獲得したりして、第1層の手駒を多様に増やすことを怠ってはいけないのだ。



◆「できる」と「成果を出す」は別物
次に、第2層は「行動特性・態度・習慣」の層である。
私たちは個々さまざまに行動の傾向性やクセを持っている。この傾向性やクセは、実は職業人としてはとても大事な要素となる。

例えば、技術者として非常に優れた技能を身につけているAさんがいるとする。つまりAさんは、第1層で高いレベルの手駒を持っている。ところが、Aさんには時間にルーズで何でも納期ぎりぎりまで引きずることが多いという傾向性がある。その結果、完成間際のトラブルに巻き込まれて納期を守れないこともしばしば起こしてしまう。とすれば、これは職業人としては問題がある。つまり、第2層に属する「時間にルーズ」という行動特性が、第1層の駒を活かしていない状況なのだ。

逆にBさんは、技術者としては平均レベルの技能しか持ち合わせていないとする。つまり第1層においては、平凡な駒を持っているだけだ。しかし、Bさんは第2層において、「他のメンバーを刺激づけして、チームをまとめるのがうまい」という行動特性を持っている。その結果、自分自身の能力不足をチームの力で補い、自分もチームも毎回目標達成することを定着化させている。これは成果を出すことのできる優秀な職業人の姿だ。

この例からわかるように、何かが「できる」と、仕事上で「成果を出す」とは別物なのである。第1層の駒がいくら豪華でも、それを成果に結びつける第2層の駒が貧弱であれば、職業人としては評価されないことになる。2つの層をうまくからみ合わせ、成果を出してはじめて、優秀であると認められるのだ。第1層と第2層は、広くは能力と呼んでいいもので、仕事の手段〈HOW〉となるものである。



◆価値観はみずからの仕事に色づけをする
最も下にくる第3層は「マインド・価値観」の要素である。
働くうえでの信条や心構え、価値観がここに含まれる。自分が行う一つ一つの仕事や中長期の目的を成就するときに、もっとも根底でそれを司っているのがこの第3層である。

例えば、ここに2人の生物学者がいるとする。2人ともバイオテクノロジー研究で名高い大学で博士号を取得し、きわめて高度な専門知識を持ち、その研究熱心さによって優れた成果を数多く発表している。その意味では、2人とも第1層、第2層の状況は同じである。しかし、この2人は第3層がまったく異なっていた。すなわち1人は、バイオテクノロジーの技術を難病治療に応用し、新薬開発の分野で役立ちたいと思った。他方の1人は、生物兵器なるものをこしらえて世の中で騒がれたいと思い、その道に手を染めた───。このように第3層は、職業人としての姿を変える大きな力を持つ。

第3層は、自分の仕事は「どうあるべきか」、他人や社会に対して「どんな価値を提供したいか」を方向づけるものであり、それによって、自分の仕事には「色」が与えられることになる。自分のマインドや価値観が強ければ強いほど、仕事には強くて鮮やかな色づけができるだろう。逆に自分の第3層が弱いと、自分の成す仕事は何が特徴で、どんな価値を世に提供しているのかがぼんやりしたものになる。人によっては、自分の価値基準がなく他律的になっているがゆえに、自分の仕事を他人が色づけしてしまう場合も出てくる。いずれにしても、この第3層は、仕事の意義〈WHY〉を見出すための大事な要素となる。

私たちは職業人としてこの3つの層を内面に持ちながら、何を成し遂げたいのか、どこに向かっていくのか、これが残った1つの要素、すなわち志向軸である。

日々の仕事上の小さな想いや願いから、中長期の大きな夢や志に至るまで、私たちは目指したい状態に向かうベクトル(方向と意志エネルギー)を持っている。何を成したいか、といういわば〈WHAT〉である。

この志向軸も、人によって明確さと強さに違いがみられる。早くから自分の軸を固めて、みずからの分野を突き進む人もいれば、軸がいっこうに定まらず、漂う人もいる。一般的には、3層の三角形が強くなれば、それに伴って志向軸も強まってくるし、逆に志向軸が強まれば、3層の三角形も強くなってくるという相互影響作用がある。これについては、この後に述べる。

http://careerscape.lekumo.biz/genron/

◆能・観・志・人
さて、この3層+1軸を別の観点でとらえてみる。
地球の4大要素をよく「地・風・火・水」という。個々の職業人がキャリアをつくる4大要素を考えてみるに、私はそれが「力・観・志・人」ではないかと思う。つまり、「能」を磨き、「観」を醸成し、「志」を抱き、「人」と交わっていくことで、自分の仕事人生がかたちづくられていく。具体的には───

【能】を磨く・・・主に第1層、第2層
・知識、経験知を得る
・技能(スキル)を身につける
・行動特性(コンピテンシー)、態度、習慣を強める

【観】を得る・・・主に第3層
・価値軸を持つ
・自律精神、プロ意識(スピリット・マインド)を養う

【志】を抱く・・・主に志向軸
・目標、目的を持つ
・理想像(イメージ)を描く
・情熱を湧かせる
・使命を感じる

【人】と交わる・・・主に第1層
・人脈(人的ネットワーク)を築く
・人から感化を受ける
・人を通じて機会(チャンス)を得る


◆キャリアの停滞を招かないために
日々の業務をこなし、キャリアをつくっていくためには「能を磨く」ことがまず基本である。したがって、私たちは自己研鑽を怠ってはいけないし、会社も従業員にいろいろな能力研修を施そうとする。

しかし「能を磨く」ことは、キャリアをつくるうえで一部の役割にしかすぎない。知識や技能、行動特性は、あくまで仕事を成すための手段だからだ。ビジネスパーソンの多くが、20代終わりから30代初めにかけて、キャリアの第一停滞期がくる。仕事を一人前にこなせるようになってきて、仕事がどんなものか、会社がどんなものかを自分なりに把握しだすと、いい意味でもわるい意味でも、慢心や怠け心が出てくる。また技術的成長が止み、次に自分が進むべき展望が見えないことへの不安も生まれてくる。

そうした停滞から抜け出すために必要なのが、「志」と「観」である。自分が目指したい理想は何か、情熱を燃やすことのできる課題は何かといった目的や像、方向性が見つかれば、それを実現するためにどんな「能」が必要になってくるのかが見えてくる。となると、それを身につけるために「さあ、がんばるぞ」という新鮮で具体的な意欲が湧いてくる。そしてまた、同じ方向の想いや価値観を持っている「人」たちと社内外で出会い、結びつきあうことで、触発を受け、「観」や「志」がいっそう固まってくることにもなる。こうして、キャリアはまた次の段階へと大きくごろりと動き始めるのである。

ただ、知識や技能は他者が教えることが可能だが、「観」や「志」は他者が教えることはできない。自分でもがきながら徐々に醸成し、固めていくしかない。しかし、このもがく(=行動で仕掛けてみる)ということに多くが消極的になる。「やりたいことが見えないので、どう動いていいかがわからない」というのが理由だ。そんなときに、私の主張はこうだ───

「観」や「志」があいまいで弱いから動けないのではなく、動かないから、あいまいで弱いままなのだ。

人生の最初から「観」や「志」が明快で強い人はいない。大事なことは、「観」や「志」があいまいな状態でも、多少のリスクを負って行動で仕掛けて動くこと。そして「人」に会っていくこと。もがいた分だけ、いろいろと見えてくる。

いずれにしても、能・観・志・人の4要素は相互に同時に影響しあっており、この4要素の好循環が起きると、自分の前の視界は一気に開けてくることになる。

ちなみに、4要素を樹木にたとえてみると、
・能=幹、枝葉
・観=根
・志=陽の光
・人=水

さらに言えば、次のようになるだろうか。
・仕事舞台(担当プロジェクト、雇用組織、業界、社会)=大地
・仕事上の成果=花、木の実
・自分のキャリア=樹木の姿


◆「心・技・体・環境」を統御し、自分の物語を編む=キャリア
以上、キャリアをかたちづくる直接的・主導的なものとして、3層+1軸や、4大要素をあげた。これに加え、間接的・副次的に自分のキャリアに影響を与える要素もある。

1つには、自分の身体・健康状態。長きにわたる仕事人生を望むようにつくっていくために身体は大事な資本だ。いくら抜きん出た才能に恵まれていても、身体がぜい弱では事を成すことができない。

また、家族状況や居住地も忘れてはならない影響要素である。独身であれば転勤や転職もしやすいが、家族を持つといろいろと制限が出てきる。都会に住むのと、地方に住むのでは、働き方も職業選択の幅も変わってくる。

さらに視点をマクロに移していくと、いま雇われている会社の状況や世の中の景気も、自分の仕事人生を左右する要因としてはたらく。会社の経営が危うくなれば、年収額や仕事機会の選択幅に影響が出るだろうし、人員整理の対象にされることも起こってくるかもしれない。景気全体が活気づけば、求人需要も大きくなり、就職・転職にもよい影響が出る。



このように自分の内と外で、自身のキャリア形成に影響を与える要素がさまざまに存在する。言い方を変えれば、心と技と体、そして環境をうまく統御し生かしながら自分の物語を編んでいくというのが、キャリアづくりだ。心・技・体・環境がうまくぴたっと、自分の意志の下に「一つ」になって事を進めるとき、おそらくそれが最良の選択肢を実行しているときだろう。

以上






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