46.「成長する組織」への挑戦 -4

人材育成に力を入れているI主任から貴重なメールをいただきました。(赤文字は追記)


いつもお世話になっております。 組織を変えることについては簡単なことではないのは誰もが理解していることだと私は思います。谷社長が言いたいことは、きっと「変えよう」と意識をするか、しないかではないかと思っています。
常に意識すると、人は何かをしようとするのではないでしょうか。
意識をしないと何もしないということになるのではないでしょうか。
その意識を明確にする。小さな目標(課題)を見出し、解決する。この繰り返しそのものの始まりが意識だと私は勝手に思っています。
あっ、意識気づきということかもしれません。

職員ひとりひとりが、この意識を持てれば組織を変えられる。
気付き、意識は訓練して行けば身に付くと信じていますが

また、その意識を持ち続けるために、自分の施設はどのよう取り組むかでは・・・本当に簡単ではありません。



また、来る2025年問題を含め、地域の中での法人の在り方に危機感を強め組織変革に挑戦されているT施設長からのメールです。(赤文字は追記)

「このままでいいと言うスタッフ」がいるとのことは、十分分かります。翻ってうちはどうかと言えば、その感触は強いと思います。ただ、やる気がないというよりは「成長するとか、組織とは、変っていかなければならない」と言うことに慣れていないという感触です。ですので、必要なのは刺激であり、目を見開かせるきっかけであり、打たれる事だと思っています。その先に、やる気の発出度合いの違いが見えてくるのかもしれません。ですので、今は全員に見込みがあるとのスタンスでいたい心境です。
現場の声は、私自身が学び気づくことができます。ありがとうございます。


そうですね。お二方が言われていることは「意識づけ」「動機づけ」になるかと思います。とても重要であり、また介護の社会、ここがとても難しいところです。(まぁ、介護だけではないのでしょうが・・・)


現実、「優秀な職員1割」が意識して、組織変革に挑戦しても残り9割の職員を動かすことができなく、浸透できない。これが介護の社会の現状ではないでしょうか。
私がこのエッセイで訴えているのは、
『個人の努力による「個人の成長」を期待しての「職場の成長」「組織の成長」はできない。「職場の成長」を創る仕組みがあって、はじめて「組織の成長」そして「個人の成長」に繋がり、組織変革がはじまる』です。

前にも書きました。時代が変わってきています。「人がいない」「財政が厳しい」状態から、時代の変化の勢いはこれから更に加速度がついていきます。介護の社会の変化は、急速であり、組織の変革は喫緊の課題です。

その中で「職場の成長」を創る仕組みのヒントは、厚生労働省が提言している職場単位での「リーダーの育成」だと私は思っています。何度もこのエッセイで登場している下図「介護人材のキャリアパス全体像」、この図の意味がわかるかどうかが管理者(常務理事クラスの施設長等です)の力量であり、リーダーシップが望まれるところです。

厚生労働省 第6回社会保障審議会福祉部会 平成28105日資料

この介護人材のキャリアパス全体像を活用した「職場の成長」の仕組みを創るのは、
リーダー(このリーダーは、管理者(常務理事クラスの施設長等です)のトップダウンしかできません。
すなわちリーダーがリーダーシップを発揮することです。

今回のお二方のメール「意識付け」「動機付け」については、介護の社会、また加速度的に変化していく今のこの時代では「個」に求めることではなく、職場、チームに求めた仕組み創りです。それが組織が求める「組織風土」に繋がることではないかと考えます。

下記は、高沢公信先生の「問題意識あるいは問題感知力とリーダーシップ」からの一文です。問題意識を課題意識に醸成する仕組み作りを言われています。


“問題意識あるいは問題感知力とリーダーシップ.能力開発Planning
http://ppnetwork.c.ooco.jp/prod06607.htm#

『大事なことは,ひとりひとりの問題意識を,一個人のスキルや能力として自己完結させないことなのだ。ひとりでできることは限度がある。どんなにすぐれた問題意識の持ち主でも,所詮個人の発想の枠から出ることはできない。それより,どんな些細な気がかりでも,どんなつまらなそうな違和感でも,チームメンバーの問題意識にさらすことで,「どうです?」「ひょっとしたら」「前にもこんなときが」「それならこうしたら」等々といった,キャッチボールを通して,掘り下げる場があることだ。このとき,ミーティングや会議だけを想定されていたら大間違いだ。会議のみで問題意識がかわされることはまれだ。何気ない会話,雑談,立ち話,重要なことはこうした中で気づかれる。そういうことがフランクにできる場づくりが必要なのである。その雰囲気をつくりだすのは,リーダーシップそのものなのだ。』


この場こそ、前のエッセイで書いた『リーダー(他者)同士で語り合う場で、介護職のグループのリーダーが、他のリーダー〈他者〉と共に現実とあるべきケアの姿のギャップ〈課題〉に対して改善意識を持って、挑戦することができる仕組みが「組織を変革」する「組織風土」を生み出す場』です。


http://www.murc.jp/uploads/2017/04/koukai_170501_c10.pdf 232p


上図は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング
「介護人材の機能分化のための人材育成プログラムに関する調査研究」報告書P232 からです。

今、介護の職場で一番足りていない「話し合う場」作りこそが、組織変革に結びつく近道かもしれません。



ひとりの問題意識ではなく、チーム・職場としての問題意識にすること!
下記は、高沢公信先生のホームページからの引用です。とても学べます。


問題意識あるいは問題感知力とリーダーシップ
問題は問題の顔をしているわけではない。「問題」はいつも誰かの目を通してしか問題として浮かび上がることはない。いわば,「問題がある」のではなく,誰かが「問題にする」ことによって「問題になる」。

だから,第1に,「問題」は,誰にとっても「問題」とは限らない。その人にとって「問題」と思えても,他の人にとっては何でもないこともありえる。もし,誰の目から見ても「問題」なら,実行する,つまり誰が,いつ,どういう解決行動をするかだけが問題となる。

しかし,第2に,問題をみないふりしたら,存在しないのと同じである。自分の感じた問題と向き合い,何とかならないだろうか,考え始めたとき,始めて問題は解決しなくてはならない事柄として目の前のある。これを,問題意識と呼ぶ。問題を感じることは,誰にでもできるが,それに向き合わない限り,その問題は,ないのと同じである。意識的に「問題にする」ところからしか,「問題」は 顕在化しない。

といっても,第3に,問題とされても,誰もがそれを解決しようとするとは限らない。問題と課題とは違う。飲み屋で上司の悪口,会社の批判をしているのは,その人がそれを問題だと思っているからかもしれない。しかし多くは酒の肴として,翌朝は忘れてしまう。誰もが自分が解決すべき問題だと受け止めるとは限らない。その問題を,自分が解決すべき問題として,具体的に考え始めたり,行動を起こし始めたとき,その「問題」は,その人にとって,「課題」になる。

リーダーシップに求められるのは,自らの問題意識や問題への感度だけではない。チーム構成員全体が,問題意識をもち,それがメンバー全員に共有化されやすいチームを作ることだ。メンバー個々の問題意識の鋭さに頼るのではなく,チームとしての問題意識を高めることだ。  どうしたら「問題」への意識を高められるのか。問題とは,現状と基準とのギャップだから,何を問題と思うかは,何に基準を置くかで違う。眼前の状態を“問題”と感ずるかどうかは,どういう基準を意識しているかによる。つまり,基準の明確化が,より問題への感度を高めることになる。

とすると,リーダーに求められているのは,
第1は,問題とする“基準”,たとえば達成すべき目標,維持すべき水準,保持すべき正常状態,守るべき基準等々を共有化すること。でなければ,何を問題とするかがバラバラになってしまう。
第2に,基準と関わるひとりひとりの意識には,理想との差,目標の未達,不足や不満,価値や意味との距離等々あるから,チームとして目指すもの(目的),期待する成果(目標)をすりあわせる必要がある。

つまり問題意識があるから問題が見えるのではないのだ。問題が見える立場と意識があるから問題意識が強くなる。チームの目指すものは何かという目的意識があるから,その中で自分は何をすべきかが意識でき,その役割意識があるからこそ,何が問題かに気づきやすい。これをたえず,チーム内で確認し,
すり合せるためにこそ,即ち,
①目的や目標が何であるかをメンバーが共有化できているか(目的意識の共有化)
②それがひとりひとり,自分の問題であると感じられるようになっているか(役割意識の徹底)
③それをひとりひとり,自分が何とかしなくてはならないと感じているか(当事者意識の自覚)
等々のためにこそ,リーダーシップが必要となる。

そのとき,単にひとりひとりの意識を強化するということで終わるなら,結局同じことになる。ひとりひとりの問題意識を高めるようにチームとしての仕組みをどう作るかがリーダーシップの課題でなくてはならない。チームが,そのように動かなくては,課題は解決されたことにはならない。それが新しいことであればあるほど,チームにわかってもらうには,最低4回以上伝える努力をしなくてはならないといわれるのには,理由がある。

大事なことは,ひとりひとりの問題意識を,一個人のスキルや能力として自己完結させないことなのだ。ひとりでできることは限度がある。どんなにすぐれた問題意識の持ち主でも,所詮個人の発想の枠から出ることはできない。それより,どんな些細な気がかりでも,どんなつまらなそうな違和感でも,チームメンバーの問題意識にさらすことで,「どうです?」「ひょっとしたら」「前にもこんなときが」「それならこうしたら」等々といった,キャッチボールを通して,掘り下げる場があることだ。このとき,ミーティングや会議だけを想定されていたら大間違いだ。会議のみで問題意識がかわされることはまれだ。何気ない会話,雑談,立ち話,重要なことはこうした中で気づかれる。そういうことがフランクにできる場づくりが必要なのである。その雰囲気をつくりだすのは,リーダーシップそのものなのだ。






0 コメント:

コメントを投稿