リーダーが担うべき役割と求められる能力・育成!


厚生労働省の社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会は、「2025年に向けた介護人材の確保~量と質の好循環の確立に向けて~」において、201710月の報告書「介護人材に求められる機能の明確化とキャリアパスの実現に向けて」で具体的な方策をとりまとめ、その具体的な提言の一つとして介護職のグループにおけるリーダーの育成であることは前回書かせていただきました。
 
今回、「介護職のリーダーが担うべき能力と役割」と「介護職のグループにおけるリーダーの育成」に焦点を深めてみます。
 
 1.介護職のリーダーが担うべき役割と求められる能力
 
 (1)高度な知識・技術を有する介護の実践者としての役割と求められる能力
具体的には、認知症の症状に応じた対応、医療やリハビリの必要性が高い方への対応、終末期の方に対する看取りを含めた対応、障害の特性に応じた対応、複合的な支援ニーズを抱える家族等の対応といった役割がある。このため、利用者の心身の状況等に係る観察力、利用者の状況に応じて適切な対応ができる判断力、認知症の症状や病状等に応じた介護等を提供できる業務遂行能力、様々な職種と連携しながら栄養状態の把握や口腔ケア、機能訓練などの業務を遂行できる多職種連携力といった能力が求められる。

(2)介護技術の指導者としての役割と求められる能力
具体的には、グループ内の介護職に対する能力開発(介護技術の指導や助言)やその能力を引き出す支援(適切な業務・役割の配分やスーパーバイズ)といった役割がある。
このため、利用者のQOL(生活の質)の向上に質するエビデンスに基づいた介護技術の指導・伝達により後進の育成ができる指導力、個々の介護職員の意欲・能力の把握とそれに応じて能力を開発していく人事管理能力といった能力が求められる。

(3)介護職のグループにおけるサービスをマネジメントする役割と求められる能力
具体的には、介護過程の展開における介護実践の管理、グループ内の介護職のフォロー、様々な職種や機関からの利用者に関する情報収集と共有、介護職のグループからの情報提供といった役割がある。このため、介護計画等に沿った介護が提供されているかをそのサービスの質とともに把握し、その向上・改善に向けた対応ができる力、多職種・多機関の間で適切に情報のやりとりができる連携力といった能力が求められる。
 
2.介護職のグループにおけるリーダーの育成について
 
リーダーは、前述のとおり、介護職のグループによるケアを推進していく者であり、その役割を担うにあたっては、観察力、判断力、業務遂行力、多職種連携力、人材及びサービスのマネジメント力など多様な能力が必要となる。こうした能力については、理論的な知識・技術の修得に加えて、現場の実践の中でそれらを深化させていくべきである。
 
(1)高度な知識・技術を有する介護の実践者としての役割を担う育成
「認知症や障害特性等に係る知識を個別支援に活かす視点」、「自らのケアの実践を振り返り、深化させるための実践研究の方法」、「医師、看護師、リハ職と連携してケアを提供する際の視点」等を修得できるような育成内容とすべきである。
 
(2)介護技術の指導者としての役割を担う育成「利用者のQOLの向上にむけたエビデンスを適切に伝えるためのコミュニケーションの方法」、「個々の職員の能力や特性を見極めるための人材アセスメントの方法」等を修得できるような育成内容とするべきである。

(3)介護職のグループにおけるサービスをマネジメントする役割を担う育成
「介護職の力量に応じた業務の割り振りなどの人材マネジメントの方法」、「介護過程を管理するための実践を評価する方法」、「グループ内のサービスの質を改善するための問題解決と分析の方法」等を修得できるような育成内容にすべきである。

上記参考文献:厚生労働省 第20回社会保障審議会福祉部会 平成29年10月4日資料
 
 
 以上 報告書からの抜粋ですがいかがでしょうか?
 
実際の介護現場を振り返ってみると、介護職のリーダーについて、介護職の統合力や人材育成力などの能力を求められているものの、十分に発揮できていないのが現状ではないでしょうか?また、人がたりない、時間がない、具体的な育成方法がわからない・できない等の理由でほとんど育成が実施されていないのではないでしょうか? 
 
今の介護職のリーダーにこの提言にある「リーダーが担うべき役割と能力、そして育成」を求める事ができるだろうかと思われる施設管理者もおられると思います。しかし、施設管理者は、なぜ介護職のリーダーに「リーダーが担うべき役割と能力、そして育成」を期待するかについて下記内容を再確認していただき、考えていただければ幸いです。
 
 
「 2025年に向けた介護人材の確保 ~量と質の好循環の確立に向けて~ 

 
1.多様な人材が関わる介護現場の目指すべき全体像
介護現場の目指すべき全体像とは、介護人材のすそ野を拡げ、介護分野に参入した人材が意欲・能力に応じてキャリアアップを図り、各人材が期待される役割を適切に担っていけるような姿となる。
 
2.実現すべき介護の提供体制
実現すべき介護の提供体制とは、利用者の多様なニーズに対応できるよう、介護職のグループによるケアを推進していくにあたっては、その中でリーダーの役割を担う者が必要であり、その役割を担うべき者としては、介護福祉士の中でも一定のキャリア(5年程度)を積んだ(知識・技術を修得した)介護福祉士が適当である。

上記参考文献:厚生労働省 第20回社会保障審議会福祉部会 平成29年10月4日資料
 
 
人手不足で厳しい現況の中では、グループ単位での人材育成が求められ、組織はその人材育成の必要性に応える体制を整備しなければならない!
 
出典:厚生労働省 第6回社会保障審議会福祉部会 平成28年10月5日資料
 
 

 
 

 
 
 

福祉人材確保専門委員会の提言、実施できますか?

下記提言に対して、それぞれの事業所ではどのように考えていきますか?

厚生労働省の社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会は、201410月に設立され、2025年介護士が38万人不足することに伴い「2025年に向けた介護人材の確保~量と質の好循環の確立について~」をとりまとめ、201710月に報告書「介護人材に求められる機能の明確化とキャリアパスの実現に向けて」を提出し具体策を提言しています。 

出典:厚生労働省 第20回社会保障審議会福祉部会 平成29年12月18日資料

多様な人材が携わる介護の現場において、介護職のグループによるケアを推進していく上で、目指すべき介護人材のキャリアパス全体像を提言しています。
 
ここで言うグループのリーダーとは、フロアリーダー、ユニットリーダーになります。
主任や課長でなく、現場のリーダーに焦点を当てています。



出典:厚生労働省 第6回社会保障審議会福祉部会 平成28年10月5日資料

人材確保専門委員会の提言では、一定のキャリアを積んだ介護福祉士がグループのリーダーとしてチーム内の介護職に対する指導・教育・フォローを行うことで、チームケアにおける提供する介護の質の向上と人材の定着の促進を期待しています。

グループのリーダーが核となっています。
人材確保専門委員会の調査では、リーダーは階層別研修で学んではいるが、振り返る場がなく、またチームメンバーへの落とし込みがないため、介護職の統合力や人材育成力などの能力が求められているものの、十分に発揮できていないとしています。


国および多くの有識者が5年かけての提言です。

いかがでしょうか?


現場のリーダー職の現況を考え、人材確保専門委員会が求めるリーダー育成ができますか?

2025年の労働市場から人材確保の本質を学ぶ!

介護事業所を健全に運営していくためには今後の労働市場の把握は重要です。「募集しても人がこない」ではなく「人がいるのか、いないのか」、介護だけでなく日本の労働力の現状と将来を見通す事で、総合的な人材確保に繋げる必要があります。

安倍首相が20161月の衆院本会議施政方針演説で、「介護離職ゼロ」の実現に向けて、「あらゆる施策を総動員し、今後25万人の介護人材を2020年代初頭までに確保していく」と明言した事は覚えていますでしょうか?

新たな労働力を確保する「一億総活躍社会」の実現に向けた「働き方改革」を推進し、多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増やしつつ、格差の固定化を回避し、成長の分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点での取組を展開すると宣言しています。

なぜ、安倍首相は介護人材の確保、そして労働力の確保を訴えているのでしょうか。

「働き方改革」はわかりづらい政策ですが、根本は労働力人口の減少が著しく、端的に言えばこのままでは日本の経済が崩壊してしまうため、その対応として「女性の活用」と「高齢者の活用」「外国人の活用」そして「生産性をあげる」事に期待しているのです。

2020年の介護職25万人の確保は、団塊世代の子供たちである「団塊ジュニア世代」が親の介護離職する労働力の減少を防ぐために絶対に必要な政策なのです。だから「あらゆる施策を総動員し、・・・」になるのです。

下図左側は、年齢3区分別の人口の推移です。生産年齢人口(15歳~65歳)は、1995年の8726万人をピークに減少し、2014年は7785万人となり、2025年には7000万人と大幅な減少を続けていきます。下図右側は、世界4か国の生産年齢人口の推移です。日本は、2000年を100として2015年は89.5%と10.5%減です。他国は、移民の関係で上がっています。
人口統計的には、移民政策をとらなければ50年以上日本の人口と生産年齢人口の減少は止められません。この事実を認識していただき次に進みます。 


  
さて、国はこの生産年齢人口の減少に対して、新たな労働力を確保する「一億総活躍社会」の各種政策を行ってきています。具体的には下図左「就業者数の見通し」を見てください。政策により2020年には340万人、2030年には608万人の新たな就業者を作り出す見通しです。下図右は女性の労働参加率を年代ごとに出しています。このグラフから女性の労働参加が急速に上がっている事がわかります。  

  

ここで、視点を介護だけでなく日本の全産業での2025年問題に切り替えます。
 
パーソル総合研究所が2016年に『経済成長率0.8%(内閣府『中長期の経済財政に関する試算』におけるベースラインケース)を2025年まで継続した場合の必要な就業者数の推計と人口動態から推計した就業者数のギャップ』を発表しています。(下記図はパーソル総合研究所の報告書からの引用です)
 
2025年、下記産業で583万人の人手不足としています。そのうちの情報通信・サービス業の中に38万人の介護職員の不足が入っています。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
今回は、経済の成長や人口の増減が過去のトレンドのまま継続した場合を想定して、2025年における必要な就業者数と、働いてくれそうな人の人数を推計しました。そのうえで、人手不足解消に努めた場合に期待できる不足解消の人数を推計しました。
 
ここで紹介した推計結果は、あくまでも先進諸国の状況などをベンチマークとしたときの可能性の一つです。当然、ビジネス環境の変化や法律、科学技術の発展、そして企業や個人の努力や変化によって、この数字は増減するでしょう。
 
 しかし、いずれにしても変わらないことは、働く人を増やしていくために、人々が「働きたい!」と思えるような環境を整えることが何よりも重要だということです。
 
人々が生き生きと働き、個人の成長によって組織が成長している社会の実現に向けて、各社や各人のできることは何か。この推計によって、ほんの少し考えてみていただくきっかけになれば幸いです。
 
出典:パーソナル総合研究所「労働市場の未来推計」プロジェクト
  
 
全国の現状と国の政策、そして2025年の労働市場について説明しました。国の考えは、「どんな働き方でも良いから働く人を創る」そして「その人達を受入れられる企業を創る」ではないでしょうか。
 
 国から離れて新潟県の労働力の現状を少し見てみましょう。
 
下図は、「新潟県年齢別人口の推移」に対して2010年から2017年の就業者数の実数を入れた図になります。赤色の生産年齢人口は2010年の約145万人に対して、2017年は129万人と16万人の減で、2030年には約110万に減少します。水色の就業人口は2010年の約118万人に対して、2017年は約117万人と1万人の減はあるもののほぼ横ばいです。
 
 
  
 
新潟県の労働力は、国と同様に年10%の減少が見られます。しかし、この7年間の就業者人口の推移から7年ほぼ横ばいの事から、労働力の確保は官民ともに努力している傾向が見られます。すなわち、新潟県も「どんな働き方でも良いから働く人を創る」になっています。
 
 
・・・以上、日本や新潟は新たな労働力を創らない限り「人がいない!」ことがわかります。
これからの最大の仕事は、「その人達を受入れられる企業を創る」「1人当たりの生産性をあげる仕組みを創る」ことかもしれません。

 
また、パーソル総合研究所の報告書にある『働く人を増やしていくために、人々が「働きたい!」と思えるような環境を整えることが何よりも重要』だということです。
 
 


介護事業所も介護人材の確保に向けて、今いる職員とともに「ケアのあり方」を含めて大きく見直す時期にきているのかもしれませんね。
 

人員配置の視点から人手不足・経営を考える


人がいない、足りない、と言われる介護職場において、80床のユニット型特養を事例として常勤介護職員の配置が48名(1.7:1)もあれば32名(2.5:1)の職場もあります。
介護の社会は、いろいろな経営母体(社福、医療法人、民間等)やサービス形態(訪問、通所、入所等)があり、またそれぞれの職場での勤務形態(16H8H夜勤体制、年間休日数等)があり、そして地域性や経営理念や経営方針など多種多様な要素があり、一概に一括りで職員の人員配置の適正についての良し悪しは言えません。
しかし、国の人員配置基準「3:1」(介護+看護)をベースに、現況の人員配置を振りかえる事は、今後の更なる人手不足の急速化および厳しい経営に対する施策を考える重要な要件と考え、今回、社福の特養ユニット型で2ユニット(夜勤1名)での人員配置を一つの事例として現況を考えてみます。
80床の介護施設として、人員配置2ユニット12名「1.7:1」の職場は介護職員が48名、2ユニット8名「2.5:1」の職場では32名になります。(この数字は、ユニットに配置される介護職員だけにしています) 同じ80床で16名の介護職員差が出ています。
人員配置は、法人の理念や経営方針で決まります。過去の資料等から多くの施設のユニット導入時は、2ユニット20名の利用者に対して12名の常勤介護士を配置した人員配置(1.7:1)で手厚い介護を目指していたと思います。(過去形の言葉になります)
その後、近年の人手不足の影響で、2ユニット12名が10名の職員配置(2:1)で行われる様になり、今現在はこの体制を維持したい施設が多いかと思います。

働かれている職員の方の中には、この2ユニット10名体制でも人が足りていない不安や不満を持たれる方がいます。しかしながら多くの職員や職場は、理想と現実の葛藤の中で、より良いサービスを提供する事を前向きに考え、この配置で仕事されています。
さて、人手不足が深刻な地域では、この2ユニット10名体制が、更に少なくなり8名になってきています。2ユニット8名で常勤職員配置は「2.5:1」です。中には、2ユニット7名の職員配置も出てきており、シルバーさん、ピーク時パート、掃除リネンの外注等、職場はいろいろな人手や手段を取りながら対応している現状です。
現実、2ユニット8名(一部7)の職場では、シフトを組む事も正直厳しい中、「ユニットケア」という高い志を維持するための業務の見直しが必然的に生じ、公休の100%取得や残業を無くす努力を、管理者やリーダーがモチベーションを持ってチーム一丸で頑張ろうとしていかなければ、職場を維持する事自体がとても難しい状態になります。
今後、人手不足が更に厳しくなると仮定すれば、2ユニット10名(2:1)体制が8名(2.5:1)になるという事を前提として、とても難しい事ですが、単純に介護職員全員の能力を25%アップするか、業務改善で業務の効率化を図るなど、職場の体質改善を目指す事が必要になります。
介護職員は、人が減ることに大きなストレスを持ちます。不安から不満になり離職に繋がり「人が足りない」の負の連鎖になっていきます。また、ストレスからの虐待に繋がることも多々考えられることです。
しかしながら国家的な人手不足の大きなウネリは変わらなく、更に厳しくなっていきます。  この「人手不足」に対して「人を減らす」ことではなく、今いる人材の質を高めていくことに介護の職場が挑戦していくことこそが、今後の「介護職場のあり方」を追求していく大きな節目と思われます。
簡単な事ではありませんが、身動きならなくなる前に着手することをお勧めします。

特養(ユニット、従来)の配置人数と離職率比較

特別養護老人ホームの介護職員の配置人数と離職率について、全国と新潟県のデータを基に比較を行いました。また、皆さまの法人の施設比較ができる一覧を添付しております。

1.介護職員の配置人数と離職率
    (1)全国 介護職員の配置人数
             データ基:社保審‐介護給付費分科会 資料(平成29719日公表)より


  
  (2)全国 介護職員の離職率
             データ基:介護労働安定センター 平成28年度 介護労働の現状について


(3)新潟県・地域 介護職員の配置人数と離職率





2.「看護+介護」「介護」職員の配置人数の結果比
 (1)全国との比較
・ユニット型 全国26年度「看護+介護」1.7人に対して新潟県は1.55
・従来型   全国26年度「看護+介護」2.2人に対して新潟県は1.83

 調査年度の違いはあるが、新潟県は全国の平均より手厚い職員体制の傾向がみられる。

(2)新潟県の看護を除く「介護」職員の平均配置について
・ユニット型 新潟の「介護」平均1.76は、2ユニット20名の利用者に対して
『常勤10人、主任0.5人、パート1人』の概算介護職員配置です。
・従来型 新潟の「介護」平均2.14は、1フロア40名の利用者に対して
常勤16人、主任1人、パート1.5人』の概算介護職員配置です。


(3)新潟県の看護を除く「介護」職員配置の地域性について

・ユニット型 県央が1.59と手厚く、下越が1.95と厳しい   20人利用者で介護職員の差は、2.3

・従来型 上越が2.02と手厚く、佐渡が2.34と厳しい   40人利用者で介護職員の差は、2.7

3.離職率の結果比較(1)全国との比較・全国の社会福祉法人の離職率12.9%は、訪問・入所・通所全てのサービスを対象にしており、新潟県のユニット型7.3%、従来型5.2%は特別養護老人ホームだけに絞っており、比較対象が違うので比較できない。 しかし、新潟の特養ユニット型7.3%、従来型5.2%の数値は、とても低い数字!

(2)離職率の地域比較