48.人材不足の現実

前のエッセイ「472025年、6年先までに行っておくこと!」で「人がいない」ことに伴い、介護の社会が行っていくことは「質と量の好循環」に向けての人材育成の仕組みの構築であると書きました。今回は、出入国管理法改正案の閣議決定を受けて「人がいない」ことについてもう少し考えてみます。

112日、出入国管理法改正案に伴う閣議決定がされるにあたって、予算委で山下法相が「極めて深刻な人材不足に対応するための新たな制度だ」と言われたことに私たち国民は重く受け止める必要があると私は感じました。



上記3種図 労働市場の未来推計.パーソナル研究所HPhttps://rc.persol-group.co.jp/roudou2025/

上図、2025年、全産業で約600万人の人手不足に対し、国は4つの対応で約665万人の手当を計画していましたが、その中の女性の活用350万人は右図「働く女性を増やす」スウェーデンなみの引き上げを想定していることから以前のエッセイで現実的でないと書いた事があります。
この事から他高齢者の活用167万人の現実性も疑わしく国が期待する665万人の確保は極めて難しいと思っていました。

そして、いよいよ国はパンドラの箱に近い『「移民政策」ではない』というわかりづらい苦肉の策「新たな在留資格」で外国労働者を受入れるという今回の入管法改正の閣議決定に繋がったのではないかと勝手に想像するところです。

このエッセイで、国の政策が間違っているとか、どうかを書くつもりはありません。
このエッセイでは、現実を受け止め、介護の社会ではどう影響があり、どうしていかなければならないことを考えていきます。

今回の改正案で、外国人介護士の採用方法は、現在3種類(EPA、留学生、技能実習制度)から、新たに「特定技能」という4番目の在留資格が出来ることになります。

留学生、技能実習生制度は昨年から施行され、現在、少しずつですが確実に動き出しているところであり、新たな特定技能は来年4月施行で、今後の動きに期待するところです。


さて、下表は直近の社保審―介護給付費分科会で使われた資料です(平成301031日)


厚生労働省 平成301031日 第163回社会保障審議会介護給付費分科会資料
 
厚生労働省 平成301031日 第163回社会保障審議会介護給付費分科会資料

表からは、介護関係の職種の有効倍率は、全産業より高い水準で推移していることがよく分ります。また、地域ごとに大きな差異があり、新潟県は全国平均3.97から比べると思ったより求人倍率が低い数値になっていることがわかります。(低いといっても3.01です。)

この表からは、介護は募集しても人がいないことがよくわかります。
職場に「人がいない」ではなく、募集しても人がいないということですね。

この違い、わかりますでしょうか?大事なことです。


下表の従業員の過不足の状況から、訪問介護員の29年度「大いに不足+不足」は55.2%、介護職員(施設等)29年度「大いに不足+不足」は35.5です。年々「大いに不足+不足」感は高まってきていますが、「人が不足」という中で、介護職員(施設等)の「大いに不足+不足」35.5%は、とても少なく感じるのは私だけでしょうか?

厚生労働省 平成301031日 第163回社会保障審議会介護給付費分科会資料


下表は、介護労働安定センターのデータです。
介護労働安定センター 平成29年度介護労働実態調査結果

介護労働安定センターのデーターには、介護職員の不足感として66.9%と出ていました。
社保審―介護給付費分科会の資料に「やや不足」を入れていない意図は、どこにも書いていないので、私にもわかりません。意図的ではないのかもしれませんが・・・。

さて、逆にこの「やや不足」をどう考えるかです。
社保審―介護給付費分科会の資料に「やや不足」が掲載されていない事で、かえって考え方を深めることができました。

新潟県で、私がお付き合いさせていただいている法人施設様を例に考えてみると、それぞれの法人施設の考え方がありますが、「大いに不足」している施設もあれば、「不足」している施設もあり、本当に1人足りないかなという「やや不足」の施設もあり、そして「適当」であるという施設もあります。

総じていえば「大いに不足+不足」しているのは、やはり3分の1ほどであり、その法人施設は本当に人がいなくて困っています。しかし、「やや不足」を含む3分の2の施設は、新たな募集をしなければならなくなった場合「人がいない」という危機感は持っているものの、直接的に今すぐに困っていないのかもしれません。

では、なぜ「人がいない」になるかは、定年退職や育児休暇、離職者が出た場合、人を募集しても直ぐに人を確保できない、また、新卒者自体が極端に少なくなっていることからの危機感が強くなっているからだと思います。かと言って余剰な人材を確保しておくだけの余裕がない介護の社会です。


今回の結論です。
  1. 全産業で危機的な人材不足、これは国も認め外国人労働者の窓口を開けた。
  2. 介護は、EPA・留学・実習生制度・特定技能と4つの在留資格ができた。今後、少しずつであるが、着実に人材確保に繋がると思われるがまだ時間が必要である。
  3. 介護の有効求人倍率は他産業に比べてとても高い。募集しても人がいない。
  4. 介護職員(施設等)は、3分の1の施設は人が不足して困っているが、3分の2の施設は、不足して困っているほどではない。ただ、危機感を持ってはいる。
1~4を鑑みて、今いる介護職員の戦力化を目指すことをお勧めします。
具体的には、「質と量の好循環」に向けての人材育成の仕組みの構築への挑戦です。
この挑戦こそが、人がいない」という危機感から「人が創れる」という安心に繋がると思われます。

簡単なことではありませんが、時間はまだあります。


2025年、そして2040年に向けての挑戦なのでしょうか。





追記:このエッセイの文面を弊社研究開発室長の斎藤に読んでもらっての感想です。
・・・「やや不足」は、調査票を書いている管理職の感触なのかもしれないですね。
現場の感覚と、やや違うような気がします。


そうですね。調査票を書く管理者と現場の感覚の違い、大きいと思います。

皆様、いかがですか?







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