2025年の労働市場から人材確保の本質を学ぶ!

介護事業所を健全に運営していくためには今後の労働市場の把握は重要です。「募集しても人がこない」ではなく「人がいるのか、いないのか」、介護だけでなく日本の労働力の現状と将来を見通す事で、総合的な人材確保に繋げる必要があります。

安倍首相が20161月の衆院本会議施政方針演説で、「介護離職ゼロ」の実現に向けて、「あらゆる施策を総動員し、今後25万人の介護人材を2020年代初頭までに確保していく」と明言した事は覚えていますでしょうか?

新たな労働力を確保する「一億総活躍社会」の実現に向けた「働き方改革」を推進し、多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増やしつつ、格差の固定化を回避し、成長の分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点での取組を展開すると宣言しています。

なぜ、安倍首相は介護人材の確保、そして労働力の確保を訴えているのでしょうか。

「働き方改革」はわかりづらい政策ですが、根本は労働力人口の減少が著しく、端的に言えばこのままでは日本の経済が崩壊してしまうため、その対応として「女性の活用」と「高齢者の活用」「外国人の活用」そして「生産性をあげる」事に期待しているのです。

2020年の介護職25万人の確保は、団塊世代の子供たちである「団塊ジュニア世代」が親の介護離職する労働力の減少を防ぐために絶対に必要な政策なのです。だから「あらゆる施策を総動員し、・・・」になるのです。

下図左側は、年齢3区分別の人口の推移です。生産年齢人口(15歳~65歳)は、1995年の8726万人をピークに減少し、2014年は7785万人となり、2025年には7000万人と大幅な減少を続けていきます。下図右側は、世界4か国の生産年齢人口の推移です。日本は、2000年を100として2015年は89.5%と10.5%減です。他国は、移民の関係で上がっています。
人口統計的には、移民政策をとらなければ50年以上日本の人口と生産年齢人口の減少は止められません。この事実を認識していただき次に進みます。 


  
さて、国はこの生産年齢人口の減少に対して、新たな労働力を確保する「一億総活躍社会」の各種政策を行ってきています。具体的には下図左「就業者数の見通し」を見てください。政策により2020年には340万人、2030年には608万人の新たな就業者を作り出す見通しです。下図右は女性の労働参加率を年代ごとに出しています。このグラフから女性の労働参加が急速に上がっている事がわかります。  

  

ここで、視点を介護だけでなく日本の全産業での2025年問題に切り替えます。
 
パーソル総合研究所が2016年に『経済成長率0.8%(内閣府『中長期の経済財政に関する試算』におけるベースラインケース)を2025年まで継続した場合の必要な就業者数の推計と人口動態から推計した就業者数のギャップ』を発表しています。(下記図はパーソル総合研究所の報告書からの引用です)
 
2025年、下記産業で583万人の人手不足としています。そのうちの情報通信・サービス業の中に38万人の介護職員の不足が入っています。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
今回は、経済の成長や人口の増減が過去のトレンドのまま継続した場合を想定して、2025年における必要な就業者数と、働いてくれそうな人の人数を推計しました。そのうえで、人手不足解消に努めた場合に期待できる不足解消の人数を推計しました。
 
ここで紹介した推計結果は、あくまでも先進諸国の状況などをベンチマークとしたときの可能性の一つです。当然、ビジネス環境の変化や法律、科学技術の発展、そして企業や個人の努力や変化によって、この数字は増減するでしょう。
 
 しかし、いずれにしても変わらないことは、働く人を増やしていくために、人々が「働きたい!」と思えるような環境を整えることが何よりも重要だということです。
 
人々が生き生きと働き、個人の成長によって組織が成長している社会の実現に向けて、各社や各人のできることは何か。この推計によって、ほんの少し考えてみていただくきっかけになれば幸いです。
 
出典:パーソナル総合研究所「労働市場の未来推計」プロジェクト
  
 
全国の現状と国の政策、そして2025年の労働市場について説明しました。国の考えは、「どんな働き方でも良いから働く人を創る」そして「その人達を受入れられる企業を創る」ではないでしょうか。
 
 国から離れて新潟県の労働力の現状を少し見てみましょう。
 
下図は、「新潟県年齢別人口の推移」に対して2010年から2017年の就業者数の実数を入れた図になります。赤色の生産年齢人口は2010年の約145万人に対して、2017年は129万人と16万人の減で、2030年には約110万に減少します。水色の就業人口は2010年の約118万人に対して、2017年は約117万人と1万人の減はあるもののほぼ横ばいです。
 
 
  
 
新潟県の労働力は、国と同様に年10%の減少が見られます。しかし、この7年間の就業者人口の推移から7年ほぼ横ばいの事から、労働力の確保は官民ともに努力している傾向が見られます。すなわち、新潟県も「どんな働き方でも良いから働く人を創る」になっています。
 
 
・・・以上、日本や新潟は新たな労働力を創らない限り「人がいない!」ことがわかります。
これからの最大の仕事は、「その人達を受入れられる企業を創る」「1人当たりの生産性をあげる仕組みを創る」ことかもしれません。

 
また、パーソル総合研究所の報告書にある『働く人を増やしていくために、人々が「働きたい!」と思えるような環境を整えることが何よりも重要』だということです。
 
 


介護事業所も介護人材の確保に向けて、今いる職員とともに「ケアのあり方」を含めて大きく見直す時期にきているのかもしれませんね。
 

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