エゴグラムをどう生かすー2「管理者の活用」


前回は、人は、「文化・社会的規範」や「知識・経験・学習」から自分自身のパーソナリティ(後天的な性格)を、計画的に変える事ができる。その実例として私自身のエゴグラムの変化を見てもらいました。今回は、管理者が職員のエゴグラムをどう活用するかの事例を下に、管理者がどう職員に関わるかについて考えてみます。


1.管理者がエゴグラムをどう使うか
 
自分を変えることも中々できないのに人を変える事はできません。

しかし、業務の遂行に困っている職員への支援は、管理者としての重要な仕事です。

例えば、リーダーについた職員がリーダー職として過度な負担がないだろうか、新人育成の指導者についた職員が、新人育成をしっかりできているだろうかなどです。

たぶん、管理者の皆様は、リーダーや指導者の行動傾向を含めた性格などを「何となく」わかっている中で、期待や不安を持って見守っていることだろうと思います。

多くのリーダー職や指導者は、与えられた業務を真剣に取り組んでいます。しかしながら、もともと持っているパーソナリティから、与えられた職務の遂行に対して、行動傾向を含めた性格上の適正が足りなく悩まれている職員がいることも事実です。

その職員にいかに関わるかです。


下記は、一つの事例です。

 

介護職員に多い形です。NP(優しさ)とAC(素直さ)がとても高い職員です。しかし、CP(信念)とFC(行動力)がとても低い職員です。

このエゴグラムの形の特徴は、ACの高い点とあわせて特に問題になるのは、低いCPです。ACはけっして悪者ではないのですが、この2つが一緒になると少々やっかいです。依存心が強く、すべて「他人におまかせ」という態度をとりがちです。あまり批判せず、ただ黙々と高いACで物事を処理します。「ノー」と言えないところです。

















『部下に命令はできません。部下に妥協してしまいます。人間関係はうまいのですが、部下に対してのストレスが大きいです。リーダーシップはありません。部下を統率することはできません。自分の思っている事が言葉で言えない傾向が強いです。』

『上司の命令に忠実に従います。仕事をコツコツこなし不平は言いません。上司の目を気にしています。潜在的な不安感が強いです。補佐役に優れています。上司の世話を焼きたい人です。』
津田太愚.エゴグラム入門 人間関係詳細編.イースト・プレス,2008,56p、57p


以上が、エゴグラムからの簡単な読み取りです。

ネガティブな事ばかり書きましたが、実はこのリーダーの職場は、上手くいっている場合もあります。それは、このリーダーは優しく思いやりがあり、人との協調性がある人で、介護の仕事自体嫌いではなく、自分の仕事以外も黙々と手伝いますので、職員や利用者の問題が無い限り、上手く動いています。

問題がある職員・利用者がいる場合や、他に課題がある職場では、リーダーシップが発揮することが難しい行動傾向の性格から、一気に上手くいかなくなり、リーダーに過大な負荷がかかりストレスを大きくため込み、ある日、突然、ギブアップしてしまいます。

新人の指導者についた場合、優しくて協調性があるので、新人から見た場合、とても良い指導者に思われます。ただ、新人や他に課題があった場合、人まかせにしてしまう事や責任感が少ない傾向から、その課題への関わりを深めることができず、新人の成長に大きな課題を残すことになります。

これらの事が、法人・施設にとって大きな損失であると管理者には気づいて欲しいのです!

パーソナリティは、人それぞれです。
エゴグラムの形に良し悪しはありません。
しかし、仕事としてみた場合、そのエゴグラムからその人の職務や役職に対して、いろいろな意味で支援していくことが管理者の仕事かと思われます。



今回のエゴグラム(CP低位、AC優位のN型)の事例の場合
  • 本人が、リーダーとして大きな負担を感じている様なら、リーダーでなくサブ等の職務変更することも一つの選択です。
  • 本人がリーダーとして頑張っていくという事なら、A(冷静さ、合理性)を上げるための方策を計画していく必要があります。
  • 新人の指導者についている場合、新人と指導者の面談をお勧めします。必ず隠れた課題があります。それを見つけ出す必要があります。


2.自我Aを意識的に上げるために


下記は、自我Aを意識的に上げる努力した場合のエゴグラムの変化を期待した形です。


















Aを上げる事を意識すると、CP(責任感や信念)が上がり、高すぎたACの下がりを期待する事ができます。その事で、ACCPの落差が少なくなり、自分の想いを伝えることができるリーダーシップが培えることができます。

エゴグラムのAの自我は、
 Aが高い(合理的、能率的)
 ・情緒より知性が優る
 ・合理的、能率的、生産性が優先する傾向がある
 ・多角的にものごとを観察し、平等、公正に評価する
 過剰になると
 ・冷たい人情味のない印象を与える
 Aが低い(無計画、非合理性)
 ・問題解決能力が弱い
 ・考えて、計画的に行動することが苦手
 ・現実認識が歪んでいるところがあり、そのときの気分や思いつきで行動します
 ・緻密さんに欠け、面倒なことは考えずに気楽にやろうする
 ・人からの信頼もいま一歩の傾向がある

自我Aを上げるためには、
 ・プラス面、マイナス面を客観的に見る
 ・物事を明確に、具体的にする
 ・感情本位ではなく、目的本位の行動をする

具体的には、リーダー間での課題の話し合い、振り返り等の研修が一つの方策です。


昨年国が10月に示した下図のリーダー育成が、このAを上げる方策の一つでもあります。
厚生労働省 第6回社会保障審議会福祉部会 平成28105日資料


参考までに、ピーエムシーでは、Aを上げるために下記の内容の研修を行っています。

リーダー研修で学んでもらうこと
  • プロセスレコード(介護職員と利用者の間に起こる会話やそれぞれの反応や行動を記録して、その記録を分析・考察することで、介護職員として、熟練した人間関係を学ぶための方法)を使った職員や利用者との関わり方
  • 支援の難しい職員についての関わり方
  • エゴグラムを学び、Aを上げる自己認識の強化
  • 別に動いている指導者研修の報告、チーム育成支援の関わり方
  • 2回実施の全員研修の感想や、自由記述の課題の整理
  • 全員研修で決めたグラウンドルールの具現化の関わり方

これらを「内省(自分の考えや行動などを深くかえりみること)「外化(振り返ったり学んだことを自分の言葉で語ること)を意識して検討しています。

そうすることで、「メタ認知(人間が自分自身を認識する場合において、自分の思考や行動そのものを対象として客観的に把握し認識すること。それをおこなう能力をメタ認知能力)の感覚もあがってくることを期待しています。

0 コメント:

コメントを投稿