「一人前」の介護職員を作ろうではないですか!① SL理論で「ひとりだち」と「一人前」の違いを学ぶ


人材不足に加えて、色々な意味で多様な人材が就業してくる介護施設の新人育成に力を入れることは、施設を健全に運営していくために極めて重要なポイントです。貴重な新人を丁寧に育成し自社の大事な戦力要員としていかなければなりません。


新人育成の成長過程について、弊社が行っている新人職員育成100日プログラムの実績から、いろいろと考え学びました。

以前のブログで、「ひとりだち」と「一人前」の違いについて書きました。多くの介護施設は、介護業務上のシフト1人工にカウントされた時点、または夜勤に入った時点で「ひとりだち」という言葉が使われています。おおよそ3~6ヶ月の教育期間が終えた時に使われています。つまり、1人で業務を任された段階の事です。

「一人前」という定義は、何だろうという事で、前のエッセイで、「ひとりだち」と「一人前」の違いを概念図で表してみました。



この概念図を見て、
 介護の社会、「ひとりだち」から「一人前」に成長している職員がどのくらいいるのだろうか?
・・・きっと多くはないだろう・・・。と感じるのは、私だけでしょうか? 

皆様はどう感じますか?

 実際、いろいろな介護関係の方から聞きましたが、「一人前」は、やはり少ないようですね。

この概念図を作成してから、「ひとりだち」から「一人前」になるためには、どうしたらできるのだろうか、いつも考えておりましたが、今年の新人職員育成100日プログラム実施に伴い、新人・指導者と面談していくことで、ある気づきを得ることができました。

突然の気づきではありません。新人職員育成100日プログラムで長年培ってきたノウハウから、何かを得ることができないか、また、弊社が行っているリーダー研修や全員研修からも、何らかの智慧がないかと、いつも寝る暇もなく(冗談です!すみません。よく寝ています)考えていました!

実は、どうして「一人前」になれるかではなく、「一人前」になぜなれないか!が分かったのです。この事は、私にとってはとても重要なノウハウになっています。


1.まず、人材育成理論「SL理論」をご紹介します

 SL理論」とは、リーダーが部下を育成する理論の一つです。






「SL理論」とは、                
リーダーシップのコンティンジェンシー理論の1つ。唯一最適なリーダーシップ・スタイルは存在せず、有効なリーダーシップ・スタイル(新人育成部下(新人)の成熟度などの状況要因に応じて変わるとする考え方。米国のP. ハーシーとK. ブランチャードが発展させた。状況対応型リーダーシップともよばれる。 SL理論では、部下の職務ごとの成熟度を能力やスキル、積極的姿勢、自信、手際のよさなどをもとに4段階に区分し、それぞれに有効なリーダーシップのスタイルが次のとおり示された。 1. 指示型(成熟度:低)……部下の役割と職務を明確にし、細かく監督する。 2. コーチ型(成熟度:やや低)……指示はこちらが与えるが、部下の意見も聞く。 3. 援助型(成熟度:やや高)……日常の意思決定は部下に任せるが、管理は一緒に行う。 4. 委任型(成熟度:高)……管理は一緒に行うが、こちらが関与するタイミングは部下に決めさせる。

SL理論のSLは「Situational Leadership」の頭文字をとったものです。「Situational 」とは、「状況の」という意味ですので、SL理論とは「状況にあわせたリーダーシップ」の理論ということになります。

部下の発達状況に合わせて「指示的行動」と「援助的行動」の組み合わせ変化させていくわけです。
双方の行動についてキーワードが3つあります。

🔶指示的行動
:『構造化する』(仕事の仕組みづくりをする)『コントロールする』『監督する』
🔶援助的行動
:『賞賛する』『傾聴する』『促進する』

SLSituational Leadership)理論とは”.ビジネスリーダーの自己成長を支援し、人と組織を笑顔にする.
http://www.earthship-c.com/leadership/situational-leadership-theory.html(参照 2018-07-13
K・ブランチャード. 1分間リーダーシップ―能力とヤル気に即した4つの実践指導法.ダイヤモンド社,1985
入門から応用へ 行動科学の展開.P・ハーシィ K・ブランチャード他.生産性出版,2000
著者:松山 淳



リーダーが業務の未成熟な部下の成長度合いに合せて
S1指示」「S2コーチ」「S3援助」「S4委任」の育成過程を経過していくことで、不安で自信がなかった事が、自信を高め、自分で考える力をつけ、自主的な活動に繋がる事になることができるという理論です。

次に、この理論に則り、新人介護職員育成に当てはめてみます。



2.SL理論での新人介護職員の指導の関わり方

 理想の新人育成の工程 指導期間1




※ SL理論での「援助」を「支援」に切り替えています


 
下記14SL理論「新人育成版」での具体的な関わりです





3.SL理論と、概念図「ひとりだち」と「一人前」との関係

S3支援」は、概念図上は「ひとりだち」の位置です。
新人が1人で行っている業務を振り返りその業務の不安や悩みを指導者が確認し、承認などを行うことで、不安や悩みが無くなる段階です。

S4委任」は、概念図上は「ひとりだち」と「一人前」の壁を登っているところです。新人は、一人前の業務を目指すための新たな目標を設定し、指導者に報連相を行うなど、自分が理解したこと、考えたこと、疑問に思ったこと、気づいたことなどを伝えるなど「考える力」を養う段階です。





このSL理論「S1指示」「S2コーチ」「S3支援」「S4委任」での指導過程を完了した段階で、新人は「一人前」の概念図に成長することが十分に可能です。



「えー、そんな馬鹿な!新人育成は、そんなに甘いものではない!」
「ましてや、新人が1年後、一人前なんになる事はない!」

皆さんも、そう思われるでしょうか?

もう一度、「S1指示」「S2コーチ」「S3支援」「S4委任」を振り返ってください。

いかがですか?
多様な人材が入ってきているのも事実ですが、このSL理論の育成過程は介護職員の成長要件に関しても、充分説明できる事だと私は思っています。

「谷さん、それは理想だよ!」 
「理想と現実は違うよ!」

確かに「理想と現実」です。 
皆さんの言われる事も事実です。

本来、新人指導の到達点がこの「一人前」であればいいのですが、現実は「ひとりだち」レベルの方がほとんどであるのも事実です。
皆さんが言われるとおりです。

では、なぜ介護施設で、概念図の「一人前」にならないのか!
ここが今回のエッセイの肝です!

「一人前」に なぜなれないか!

このSL理論と100日プログラムから得たノウハウを下に、介護事業所の新人指導を整理していくことで、私は、介護事業所の指導の在り方でいくつかの課題がある事に気づくことができました。

この課題の紐解きこそ、介護現場の質を上げることになると私は信じています。

次回のブログをお楽しみに!





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