人員配置の視点から人手不足・経営を考える


人がいない、足りない、と言われる介護職場において、80床のユニット型特養を事例として常勤介護職員の配置が48名(1.7:1)もあれば32名(2.5:1)の職場もあります。
介護の社会は、いろいろな経営母体(社福、医療法人、民間等)やサービス形態(訪問、通所、入所等)があり、またそれぞれの職場での勤務形態(16H8H夜勤体制、年間休日数等)があり、そして地域性や経営理念や経営方針など多種多様な要素があり、一概に一括りで職員の人員配置の適正についての良し悪しは言えません。
しかし、国の人員配置基準「3:1」(介護+看護)をベースに、現況の人員配置を振りかえる事は、今後の更なる人手不足の急速化および厳しい経営に対する施策を考える重要な要件と考え、今回、社福の特養ユニット型で2ユニット(夜勤1名)での人員配置を一つの事例として現況を考えてみます。
80床の介護施設として、人員配置2ユニット12名「1.7:1」の職場は介護職員が48名、2ユニット8名「2.5:1」の職場では32名になります。(この数字は、ユニットに配置される介護職員だけにしています) 同じ80床で16名の介護職員差が出ています。
人員配置は、法人の理念や経営方針で決まります。過去の資料等から多くの施設のユニット導入時は、2ユニット20名の利用者に対して12名の常勤介護士を配置した人員配置(1.7:1)で手厚い介護を目指していたと思います。(過去形の言葉になります)
その後、近年の人手不足の影響で、2ユニット12名が10名の職員配置(2:1)で行われる様になり、今現在はこの体制を維持したい施設が多いかと思います。

働かれている職員の方の中には、この2ユニット10名体制でも人が足りていない不安や不満を持たれる方がいます。しかしながら多くの職員や職場は、理想と現実の葛藤の中で、より良いサービスを提供する事を前向きに考え、この配置で仕事されています。
さて、人手不足が深刻な地域では、この2ユニット10名体制が、更に少なくなり8名になってきています。2ユニット8名で常勤職員配置は「2.5:1」です。中には、2ユニット7名の職員配置も出てきており、シルバーさん、ピーク時パート、掃除リネンの外注等、職場はいろいろな人手や手段を取りながら対応している現状です。
現実、2ユニット8名(一部7)の職場では、シフトを組む事も正直厳しい中、「ユニットケア」という高い志を維持するための業務の見直しが必然的に生じ、公休の100%取得や残業を無くす努力を、管理者やリーダーがモチベーションを持ってチーム一丸で頑張ろうとしていかなければ、職場を維持する事自体がとても難しい状態になります。
今後、人手不足が更に厳しくなると仮定すれば、2ユニット10名(2:1)体制が8名(2.5:1)になるという事を前提として、とても難しい事ですが、単純に介護職員全員の能力を25%アップするか、業務改善で業務の効率化を図るなど、職場の体質改善を目指す事が必要になります。
介護職員は、人が減ることに大きなストレスを持ちます。不安から不満になり離職に繋がり「人が足りない」の負の連鎖になっていきます。また、ストレスからの虐待に繋がることも多々考えられることです。
しかしながら国家的な人手不足の大きなウネリは変わらなく、更に厳しくなっていきます。  この「人手不足」に対して「人を減らす」ことではなく、今いる人材の質を高めていくことに介護の職場が挑戦していくことこそが、今後の「介護職場のあり方」を追求していく大きな節目と思われます。
簡単な事ではありませんが、身動きならなくなる前に着手することをお勧めします。

特養(ユニット、従来)の配置人数と離職率比較

特別養護老人ホームの介護職員の配置人数と離職率について、全国と新潟県のデータを基に比較を行いました。また、皆さまの法人の施設比較ができる一覧を添付しております。

1.介護職員の配置人数と離職率
    (1)全国 介護職員の配置人数
             データ基:社保審‐介護給付費分科会 資料(平成29719日公表)より


  
  (2)全国 介護職員の離職率
             データ基:介護労働安定センター 平成28年度 介護労働の現状について


(3)新潟県・地域 介護職員の配置人数と離職率





2.「看護+介護」「介護」職員の配置人数の結果比
 (1)全国との比較
・ユニット型 全国26年度「看護+介護」1.7人に対して新潟県は1.55
・従来型   全国26年度「看護+介護」2.2人に対して新潟県は1.83

 調査年度の違いはあるが、新潟県は全国の平均より手厚い職員体制の傾向がみられる。

(2)新潟県の看護を除く「介護」職員の平均配置について
・ユニット型 新潟の「介護」平均1.76は、2ユニット20名の利用者に対して
『常勤10人、主任0.5人、パート1人』の概算介護職員配置です。
・従来型 新潟の「介護」平均2.14は、1フロア40名の利用者に対して
常勤16人、主任1人、パート1.5人』の概算介護職員配置です。


(3)新潟県の看護を除く「介護」職員配置の地域性について

・ユニット型 県央が1.59と手厚く、下越が1.95と厳しい   20人利用者で介護職員の差は、2.3

・従来型 上越が2.02と手厚く、佐渡が2.34と厳しい   40人利用者で介護職員の差は、2.7

3.離職率の結果比較(1)全国との比較・全国の社会福祉法人の離職率12.9%は、訪問・入所・通所全てのサービスを対象にしており、新潟県のユニット型7.3%、従来型5.2%は特別養護老人ホームだけに絞っており、比較対象が違うので比較できない。 しかし、新潟の特養ユニット型7.3%、従来型5.2%の数値は、とても低い数字!

(2)離職率の地域比較
 




38万人介護職員不足について

 
く分からない数字が一人歩きしているのでは?

介護の人材が2025年に38万人足りないと2015年に今まで足りるといっていた厚生労働省が発表しました。

 2017年の今日、ハローワークに募集してもこない。ましてや新卒は金の卵状態。介護福祉士の専門学校も定員の40%を切る学校もあり、学校閉鎖する状態。介護事業者は人材の枯渇で、あとは人がいないので事業縮小しかないとの地域も出ているようです。

さて、2015年に突然出てきた38万人足りない!
その数字の根拠はどこにあるのでしょうか?

国は、利用者3人につき1人、つまり3:1での介護職員の配置基準を設定しています。この基準には看護士も含めてです。この看護士含める話しを知っている方は結構少ないようです。

国が出した38万人不足は、需要と供給ということで入所系において、この3:1基準が使われているとしたら38万人不足ではなく、もっと足りない数字が出てくると思われます。

介護は、個別ケアといわれ介護の質を求められています。この質を維持するためには、3:1でなく2:1の人員配置が必要であると言われ、多くの社福等は、この配置で運営していました。(今も2:1での施設もあります)

全ての介護事業者が2:1配置で行っていないので一概に言えません。しかし国の基準である3:1での運営は余程のノウハウがなければできないようです。

ある法人のトップは、国が決めている基準があるのだからと頑として3:1で運営している法人もあります。しかしながら、3:1での運営は無理があり人を育てる事ができなく、現在、人がこない、人がきても?疑問を持つ人材しかこない、育成ができない負の連鎖の逆スパイラルに陥っていると聞いています。

国はどんどん介護報酬を下げてきています。介護事業者は質を担保にしながら介護職員の配置をマネジメントしなければなりません。

人がいないのだから、理想の2:1でなく2.5:1にすれば、人は抑えられ人件費も抑えられ丸く収まるようですが、簡単なことでありません。

働く側の職員さんは、今までの人数が減ることに対してはとても大きな不安を持ちストレスをためてしまい、退職する原因にもなります。

この辺の話しはまたにします。

38万人足りない!この数字が正しいかどうか、私的には疑問ある数字と提言しておきます。

因みに、我が新潟県は20254700人不足と出ています。この4700人、どうやって集めるのでしょうか?4700人という数字は、100床の特養で介護職員を50人(2:1)とすると、新たに94の特養を作る人材に匹敵します。

人がいませんね!