3つの研修の意義


今回のエッセイは、弊社研究開発室長の斎藤洋によるものです。

①研修は負担だがやらなければならない
2018年度、ピーエムシーは「リーダー研修(毎月1回)」「指導者研修(指導期間に計4回)」「全体研修(年2回)」1年間かけて実施することを提案しています。
「人手が足りない」「育成にかける予算がない」中でこのボリュームの研修を行うことは施設にとって大変大きな負担になりますが、どうして今このような研修を行う必要があるのでしょうか。

 なぜ研修が必要か、どんな研修が必要か
人材不足が深刻化する中で、介護施設もまた「少人数で戦える組織」にならなければ生き残っていけません。職員一人ひとりがもっと成長し、前向きな気持ちで仕事に向き合っていけるように意識を変えていく必要があります。しかも、やらされ感ではなく、「良いケア」を行えるような工夫や相談ができるよう「働きやすい職場づくり」を目指していかないとやる気のある職員が辞めてしまう恐れがあります。個々の介護職員がやりがいを持って働ける職場にしていくためには、介護の専門的知識や技術だけでなく、他にもっと学ぶべきことがたくさんあるのではないでしょうか。

これまでの介護職員のための研修の成果と課題
これまでの研修の多くは「介護の知識や技術」など「個人の学び」に対する研修が多く、学んだことを実践に活かすことが難しいという課題がありました。

「介護の知識や技術」のような知識伝達型の研修を個々人が受講し、学んだ内容を復命書や伝達研修で現場に落とそうにも中々その時間がとれず、個人の学びは組織の学びに反映されてこなかったと最近いくつかの調査報告書が指摘しています。このような指摘を受けて「介護福祉士ファーストステップ研修」や「認知症実践者研修」「ユニットリーダー研修」など、講義で学んだ理論を現場で実践し、これをふりかえるという研修も増えてきたものの、現場はこれまで以上に多忙となっており、負担の大きい研修の課題にチームの協力を得て取り組むことは難しい状況です。

厚生労働省では昨年秋、「少人数のグループをまとめるリーダーの育成」に力を入れていくべきとの方針を示しました。業務多忙な中でもリーダーを育成しなければなりません。また、リーダーに対する育成と同時に職員全員を対象とした研修を実施し、法人や事業所の共通認識を高めていくことも重要な取り組みだと考えます。

これまでの新人育成の成果と課題はどうか
新人、指導者はそれなりに頑張りますが、そこには限界があります。チーム全体で新人を育てよう、指導者に協力しようという認識の共有が難しく、気持ちがあっても具体的にどう指導者支援をしたら良いのか分からないというケースをこれまで多く見てきました。それでも指導者と現場職員の頑張りで、ほとんどの場合、新任職員は「独り立ち」し、業務を「こなす」ことができるようになっていきます。しかし、多くの新人はそこで成長が止まってしまい、いつまでたっても「工夫」や「提案」「主体性」が育たないという現状があります。介護未経験者やシニアなど、新人の知識や経験、年齢等が多様化していることも新人育成を難しくしています。

ではどうすればよいのか?
多くの介護現場では、これまでの業務のあり方を簡単には変えられないと感じている職員が多いと思いますが、今大事なのは職員の負担軽減や効率化を考え、皆で相談しながら業務のあり方を変えていけるような柔軟な組織をつくっていくことです。組織を変えていくためには、施設長の役割がとても重要です。

施設長の役割として「どのような目標を持って施設を運営しているのか」「目標達成のために介護職員にどのような役割を求めるのか」を明確に発信していくことが大事だと考えます。

単に理念を唱和させることではなく、もっと具体的で、実現可能で、介護職員が共感できるようなメッセージを発し、職員が目標を達成するために施設長はどのような支援をしていくのか伝える必要があります。

施設長でなければできない支援があります。チームメンバーへのトップダウンで業務見直しをさせること。主任やリーダーの役割を明確化し、出来ているか確認していくこと。指導者を支援し、指導のための時間を確保し、新人育成が大事な業務であることを組織に知らしめること。成果を求めるだけでなく、必要な資源を与える事。出来る支援を全力で行っていくことで、現場の空気も変わっていくと思います。

しかし、これらを実践していくには様々な困難が起こる事が予想されます。これを乗り越えて組織改革を進めていくためには、①施設長を支援する「プロジェクトチーム」を法人が設置し、数年単位の計画を立てて段階的に取り組んでいくこと、②一方的なトップダウンではなく現場の状況や意向にも耳を傾けながら計画を進めていく事、③同業他社の取り組みや第三者からの意見を参考にすること、等を行うことでバランスをとりながら組織改革を進めていけると考えます。

ピーエムシーの研修では、3つの研修それぞれのセグメント(階層)で職員の感じている課題を言語化し、可視化し、優先順位を検討し、これを共有するとともに、施設長に対して現場をどのように支援する必要があるのかを伝え、支援をお願いするということを実践していきます。

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